『現行日本法規』発刊70周年記念

コラム

法律の成立と『現行日本法規』

法律は誰が作るのでしょうか。~「衆法」「参法」「閣法」とは?~

  • 法律は、「国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関」である国会が所定の手続により議決する、と日本国憲法に規定されています。
  • 国会に提出される法案(法律になる前の条文)には、内閣が提出する「閣法」、国会議員が提出する議員立法(衆議院議員が提出する「衆法」、参議院議員が提出する「参法」)があります。
  • 平成30年に成立した法律は105件。そのうち閣法が76件、議員立法は29件(衆法23件、参法6件)でした。つまり、我が国の法律の多くは内閣(各省庁)が法案を作っているのです。

法案は「審査」を受けます。

  • 法案は国会に提出されるものですので、内容が正確であることはもちろん、憲法や他の法令との関係、立案の意図が正しく条文に反映されているかといった「審査」を経なければなりません。
  • 「閣法」は、各省庁が原案を作成し、内閣法制局で審査が行われます。
  • 各省庁が原案を作成する際、及び内閣法制局が法令審査を実施する際に、法律の現在の状態を確認するために利用されるのが『現行日本法規』です。

一部改正法とは?

  • 法律には、新規に制定される法律と、社会情勢の変化などで法律の内容を変更する場合に作られる「一部改正法」があります。
  • 平成30年に制定された法律105件のうち、新規制定は25件、一部改正は80件でした。新規制定には「天皇の即位の日及び即位礼正殿の儀の行われる日を休日とする法律」など、一部改正法には「民法の一部を改正する法律」などがありました。

法律が公布され、現在の姿を確認するためには・・・

  • 日本では、法律を改正する場合に、ある法律の条文に一部改正の内容が溶け込んで新しい内容の法律となる「溶け込み方式」が採用されています。
  • 一部改正法は、『第○条中「○○○」を「×××」に改める。』といった「改め文」で構成されていて、改正前の条文と比較しながら読まないと法律の内容を理解することができません。
  • 法律は「官報」に公布され、国民に知らされますが、一部改正が溶け込んだ最新の法律の条文を知るには、改正のたびにその内容を蓄積してきた『現行日本法規』のような法令集が必要となるのです。

『現行日本法規』ができるまで

毎日官報を確認しています!

  • 「官報」は、法律・条約などが掲載される国の機関紙です。
  • 弊社には、毎日官報をチェックする専門チームがあります。
  • 官報を入念にチェックし、公布された法律・条約などの情報をリサーチします。

独自の法令データベースを更新しています。

  • 独自に構築した法令データベースに登載した法令を、最新の内容にアップデートします。
  • 社内資格を持つ法令データ制作のエキスパートが、法令改正が正しく行われたか、専門家の目で厳しくチェックします。

正確、迅速な編集を行います。

  • 『現行日本法規』編集部では、毎月、法令の内容を最新にする「追録」を制作します。
  • 「追録」に収録する法令をデータベースから取り出し、内容を再度チェックします。
  • 法令編集のエキスパートが、実務に即し、検索がしやすいよう、法令の登載順序を綿密に検討し、原稿を作成します。
  • 原稿の内容を、編纂元の法務省が最終確認します。

「追録」を印刷し、お客様にお送りします。

  • 印刷工程においても、何重もの確認を行います。
  • 「追録」を制作する独自の機械で印刷、製本し、完成です。

「追録」を差し替えて、最新の内容に!

  • 弊社のスタッフがお客様を訪問し、『現行日本法規』の台本に対して追録の差し替えを行います。
  • 最新内容の『現行日本法規』の完成です!

もしも『現行日本法規』がなかったら

『現行日本法規』は法律の制定に重要な役割を果たしていることをご紹介しました。
それでは、もし『現行日本法規』がなかったら、一体どうなるのでしょう?

法律は「官報」に掲載されるというけれど…。

「改正民法が成立!」ニュースで報道された法律が見たい!
公布された法律は「官報」に掲載されると聞いたので、見てみたけれど…これはナニ!?

現在の法令の条文を確認するのが大変…!

日本の法令は、内容に変更があった際に、一部改正が行われます。一部改正があると、官報には次のような条文が掲載されます。

(平成29年法律第44号(抜粋))

民法の一部を改正する法律
民法(明治二十九年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。
(中略)
第九十六条第二項中「知っていた」を「知り、又は知ることができた」に改め、同条第三項中「善意の」を「善意でかつ過失がない」に改める。

これだけ見ると、民法第96条は改正後にどのような条文になるのか理解することは難しいでしょう。

改正前の条文と見比べればよいのね!でも改正前の条文って…?

民法の制定は明治29年。改正前の条文を調べるために、民法制定時の官報を図書館で閲覧したけれど…
平成29年改正法で改正前とされる文言「知っていた」と一致しません。

第九十六条 …
知リタルトキニ限リ其意思表示ヲ取消スコトヲ得

どうやら他にも改正があったらしい…。

民法は平成16年に大きな改正があり、カタカナ表記から現在の口語表記に改められました。
その時の官報も調べないと全容が把握できないのでしょうか。
それ以外にも改正があれば、一体いつまで調べれば、最新の民法が読めるのでしょうか。

「現行日本法規」がないと…

古い条文に、改正された条文を官報で確認し、手作業で修正!
また官報を見たら次の改正が載っていたので、さらにそれを修正…
正確な条文の姿はいつわかるの!?

法律の現在の姿を正しく知るための「原典」。
それこそが『現行日本法規』の務めであり、様々な法令集の元となる情報なのです。

※なお、民法第96条は令和2年4月1日から次のようになります。

(詐欺又は強迫)

第九十六条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。

2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていた知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。

3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

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