南三陸町 屋上の円陣 ―防災対策庁舎からの無言の教訓―

「きっと守り抜く」 宮城県南三陸町の防災対策庁舎の屋上で円陣を組み、必死に津波に耐えようとしている人たちがいた。 そこには、強い決意で女性、高齢者、若い職員たちを円陣の内側に入れ、生死の瀬戸際にありながら、最後まで人間の尊厳と誇りを失っていない姿があった…。 「その時、何が起こっていたのか」今だからこそ明らかにできる防災・危機管理アドバイザー山村武彦による渾身のノンフィクション。


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246〜7Mの津波がやって来る。智さんは武者震いした。⑵6Mの津波が10分後に防災庁舎3階には停電に備えてディーゼルエンジン付き自家発電設備が設置されていた。自家発電設備は停電を自動感知し自動起動する仕組みである。しかし、発電機のエンジンがフル回転になって電圧・電流が安定するまで数分かかる。その間の停電を防ぐためAVR(自動電圧調整器)とUPS(無停電電源装置)が併設されていたため、防災庁舎の照明は切れることなく点灯していた。上階からディーゼルエンジンの鈍い振動が伝わってくる。「よし、自家発電は大丈夫だ」南三陸町は震災前から「情報化推進計画」を基に防災行政無線のデジタル高度化が進められ、すでに2010年12月20日には完工していた。そして震災の年の1月から試験運用が開始されていた。しかし、2日前の地震発生時、一部地域で放送されない問題が発生し、業者が午後から調整に来ていた。それが完了した時点で地震が発生したのである。間一髪だった。Jアラートも正常作動し「宮城県沖を震源とするM7・9、念のため津波に注意」と伝えてきた。速報値はM7・9だった。(気象庁の発表値の推移、午後2時49分速報値7・9、16時暫定値8・4、午後5時30分M8・8、3月13日にM9・0に訂正)


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