
特集:包摂的な地域社会への視座
2015年9月、厚労省は「新たな時代に対応した福祉の提供ビジョン」を公表した。近年、介護保険、障害者総合支援、子ども・子育て支援、さらには生活困窮者自立支援などの福祉施策や制度が整備され、「地域」という視点からの分野横断的な取り組みが重視されるなかで、全世代・全対象型の新しい地域包括支援体制の構築をめざすものだ。すでに政府の「一億総活躍プラン」などとも連動しながら、さまざま形で検討が進められているが、制度を実施・運用している自治体や地域では、具体的な取り組みも始まっている。これから地域の福祉はどこへ向かっていくのか、その方向性について考えてみたい。
■包括的、包摂的な地域づくりへのビジョン/原田正樹 日本福祉大学教授

■分野横断的な地域福祉の実現に向けて/永田 祐
■ダブルケア(ケアの複合化)と自治型・包摂型・多世代型地域ケアシステム/相馬直子
■子ども・子育て支援を含めた「地域まるごとケア」への期待/奥山 千鶴子
■若者の貧困が、さらなる「下流老人」を生む/藤田孝典
■スポーツによる包摂的な社会づくりの可能性
──野武士ジャパンなどの事例から/蛭間芳樹
〈取材リポート〉包摂的な地域づくりへの実践
◇全世代の包括支援に向け、地域福祉教育総合支援システムを構築/三重県名張市
◇「くらし支えあい条例」を制定し、生活困窮者等支援の仕組みを明文化/滋賀県野洲市
◇産官学の枠を越えた連携で、地域包括ケアを一歩先へ/愛知県豊明市
スキルアップ特集:市民とともに成長する職員へ
多くの自治体が参画・協働を掲げ、市民とともにまちづくりを進めています。そうした中、職員にはどんな力が求められるでしょうか。また、市民や地域との関わりを通じて、実際に職員は何を学び、どのように成長しているでしょうか。現場での実践や職員の経験談から見ていきます。
■協働型まちづくりの実践と職員の人材育成/田中 優
〈取材リポート〉
◇地域とのつながりや対話の促進を目指し「地域ふれあい協働隊」を結成/山口県光市
〈職員の経験談に学ぶ〉
□相互の信頼関係を築き住民自治の充実と活性化を/田中逸郎
□学び合いを活かして市民とともに進めるまちづくりの実践/神崎由美
□市民が主役!若者が活躍できるまちを目指して/森 玄成
スキルアップ連載
■管理職って面白い!/定野 司
■ファシリテーションdeコミュニケーション/加留部貴行
■職場の問題解決!事例で学ぶ人財マネジメント講座/高嶋直人
■クレーム対応駆け込み寺/関根健夫
■いい役所をつくろう!~みんなが主役の自治体改善運動/自治体改善マネジメント研究会
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●Governance Focus
□“楽都仙台”に学ぶ復興支援 被災者を支えた「音楽の力」/梶山寿子
●Governance Topics
□若年層の社会参加意識の醸成や投票率の向上を
/シティズンシップ推進実践フォーラム2017
□地域経営、地域人材に焦点を当てて地域自治の最先端を検討
/連続セミナー「地域創発のフロンティア」
□議員のなり手不足や政策提言を集中的に議論
/第2回町村議会改革シンポジウムin長野
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取材リポート
□平成にっぽんの首長 自治の自画像/ 神保国男 埼玉県戸田市長
「おしゃれで斬新なまちにしたい」。市民の自覚をもった人が暮らすまちへ。

子育て、教育、暮らし、環境、経営など各分野の政策が評価されている埼玉県戸田市は若い子育て世代の転入で人口増加が続いている。神保国男市長(74)に聞いた。
「子育てと教育に力を注ぎ、子育て世代を中心に人口増加が続く。いま、最大の課題は保育園の待機児童の解消。緊急対策で3年後までに受入枠を計1200人分拡大する」。
□新版図の事情──“縮む社会”の現場を歩く/葉上太郎
医師、それぞれの選択【福島県南相馬市小高区の帰還(4)】
原発事故、続く苦悩
医者が戻らないから帰れない」。避難指示が解除された福島県南相馬市の小高区でよく聞く言葉だ。だが、医師もまた人間である。5年を超える避難でそれぞれ「事情」が生まれた。戻りたくても避難先で重責を負い、引き裂かれている医師。妻子の移住先から単身赴任で本格再開を目指している医師。帰還を熱望しながらも亡くなった歯科医師……。「戻れ」とは簡単に言えない現実がある。
□現場発!自治体の「政策開発」
日本のアニメ発祥地としての魅力の発信と産業振興を図る
──アニメ・イチバンのまち(東京都練馬区)
東京都練馬区は、日本のアニメーション発祥地であり、アニメ制作会社などが集積する"アニメ・イチバンのまち"である。その特色を活かして区は、区内のアニメ関連事業者で設立した一般社団法人練馬アニメーションと連携し、アニメをテーマにしたイベントや教育への活用、国際交流などに力を入れている。アニメを産業と文化の両面から盛り上げ、地域経済の活性化と区民が誇りに思うまちを実現するのがねらいだ。
□人口減少・地域再生に挑む/吉田直幸
大学生に住んでもらい大規模団地の活性化を図る
──埼玉県春日部市
埼玉県春日部市は、人口減少と高齢化が課題となっていた武里団地の再生に向けて、「官学連携団地活性化推進事業」に取り組んでいる。市と包括的連携協定を結んでいる大学の大学生に武里団地に居住してもらって入居促進の弾みにする、全国的にもめずらしい試みだ。市が家賃と通学電車賃の一部を助成する代わりに、学生には団地内で地域貢献活動を進めてもらい団地の活性化を図っている。
□議会改革リポート【変わるか!地方議会】
多面的に市民からの意見等を吸収
──兵庫県三田市議会
兵庫県三田市議会は議会報告会・意見交換会に加え、毎月1回、議会として市民からの提案や意見、疑問、苦情などを受け付ける「市民相談」を実施。議会だより「つなぐ」も表紙をイラストにし、中学生に理解してもらえるよう分かりやすさに徹底的にこだわる。今後、市民からの意見も踏まえ、政策提言等に結びつけていくという同市議会を取材した。
連載
□続・アサノ・ネクスト 浅野史郎 小池知事の都議会改革
□「後藤式」知域に飛び出す公務員ライフ/後藤好邦
高校生と地域とのつながりが生み出す地方創生のカタチ
□童門冬二の日本列島・諸国賢人列伝 細井平洲(十五)“時”を変える底辺パワー
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□ザ・キーノート/清水真人
□自治・分権改革を追う/青山彰久
□新・地方自治のミ・ラ・イ/金井利之
□Gove Tech~デジタル時代の自治体イノベーション/後藤 浩
□自殺対策最前線「生きる支援」を、地域から/清水康之
□市民の常識VS役所のジョウシキ/今井 照
□地方分権改革と自治体実務──政策法務型思考のススメ/分権型政策法務研究会
□“危機”の中から──日本の社会保障と地域の福祉/野澤和弘
□自治体の防災マネジメント/鍵屋 一
□市民と行政を結ぶ情報公開・プライバシー保護/奥津茂樹
□もっと自治力を!広がる自主研修・ネットワーク【自学カフェ(群馬県)】
□公務職場の人・間・模・様/金子雅臣
□議会局「軍師」論のススメ/清水克士
□「自治体議会学」のススメ/江藤俊昭
□リーダーズ・ライブラリ
[著者に訊く!/『あなたの仕事、感情労働ですよね?』関谷大輝]
カラーグラビア
□自治・地域再興
[湯浅 誠・社会活動家/法政大学教授]
「地域づくり」の視点から貧困対策を

90年代からホームレス支援に携わり、年越し派遣村村長、内閣府参与を務めるなど、長く生活困窮者支援に取り組んできた湯浅誠氏。その後も法政大学教授に就任するなど、活動の幅を広げながら、社会問題に対する情報発信や現場での実践を続けている。近年、力を注いでいる子どもの貧困対策などを中心に話を聞いた。
□山間海間/芥川 仁
白菜生産量日本一を支える技と外国人実習生──茨城県結城郡八千代町
□手業手技/大西暢夫
五感をフルに活用して?を作る──藍師・新居 修(徳島県上板町)
□ドキュメントW──戦火の日常を撮る/綿井健陽
米国はどこに向かうのか
□人と地域をつなぐ──ご当地愛キャラ/しんじょう君(高知県須崎市)
□クローズ・アップ
ゆるやかであたたかいつながりの中から──ふじのくにニッポンの縁側フォーラム
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■DATA・BANK2017 自治体の最新動向をコンパクトに紹介!
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