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「国文学 解釈と鑑賞」休刊のご挨拶
「国文学 解釈と鑑賞」は昭和11年に株式会社至文堂より国文学の啓発を目的として創刊され、平成21年の業務統合後は、当社より刊行を続けておりましたが、雑誌経営を取り巻く厳しい状況に鑑み、今年9月発売号(10月号)をもって、休刊することといたしました。
この間に賜りましたご厚情並びにご支援に対し、あらためて心から御礼申し上げます。
今後も良書の発行に尽力してまいりますので、引き続き当社出版図書をご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。
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【特集:筒井康隆――現代文学の巨人】
筒井康隆は、デビュー以来50年、つねに既存の「文学」と戦い続けてきました。その挑戦は「小説」という制度への批判や攻撃にとどまらず、その制度を支える単位としての言葉や文字の批判にも及んでいます。
筒井康隆は最初のマルチメディアの作家として、文学以外にも、演劇、音楽、映画、マンガ、インターネットなどさまざまな分野で新しい活動を行なってきましたが、本誌では、文学における活動を中心として、その足跡を辿ってみました。
●筒井康隆Eメールインタビュー
「作家の軌跡と未来への指針」
――〈聞き手〉専修大学名誉教授 柘植光彦、筒井康隆研究者 平石滋
●作家の位置
・談論爆発――ビッグ3の内宇宙
/慶應義塾大学教授 巽孝之
・時間錯誤の前衛――筒井康隆と〈前衛〉のパラドックス
/SF評論家 藤田直哉
・ディスクールの変革、あるいは叙述トリックの彼方へ――筒井康隆の一九九〇年
/工学院大学教授 吉田司雄
・「宝」に行き着かない文学――『虚人たち』を中心として
/東京外国語大学教授 柴田勝二
・リアリズムからの脱却――読者の手による「虚構」
/同志社大学教授 真銅正宏
●方法の開拓
・言語で笑わせる――スラプスティックと言語ギャグ
/作家 清水義範
・筒井康隆と妄想
/作家 小林恭二
・筒井康隆――「超虚構」の構想と実践
/ノートルダム清心女子大学教授 綾目広治
・ネット文学の嚆矢「朝のガスパール」
/プログラマ 中村正三郎
・言葉狩りと断筆
/作家 幸森軍也
●文学の流れ
・埴谷雄高から筒井康隆へ――仮想的な連続性
/文学研究者 永島貴吉
・安部公房から筒井康隆へ――パヴロフ的言語とフロイト的言語
/早稲田大学准教授 鳥羽耕史
・筒井康隆と神林長平における虚構の諸相
/専修大学大学院博士後期課程 白鳥克弥
・夢という超現実――筒井康隆から笙野頼子へ
/文芸評論家・愛知淑徳大学教授 清水良典
●作品の分析
・夢の力は生きているか――『夢の木坂分岐点』論
/詩人、恵泉女学園大学特任准教授 林浩平
・虚仮にすること――筒井康隆『虚人たち』における仮構と虚構
/早稲田大学非常勤講師 永野宏志
・虚構からの挑戦――『残像に口紅を』
/北海道大学大学院教授 中村三春
・接続=転位するコンストラクション――『文学部唯野教授』
/愛知教育大学准教授 西田谷洋
・巨船ベラス・レトラス
/専修大学名誉教授 柘植光彦
・仕事をする文体――『ダンシング・ヴァニティ』
/早稲田大学教授 石原千秋
●少女文学と老人文学
・筒井康隆の少女表象――和子からビアンカへ
/東京学芸大学教授 千田洋幸
・老人のいる世界
/東海大学非常勤講師 水沢不二夫
●キャラクター論
・「時をかける少女」論――変奏と転化する〈少女の物語〉
/二松学舎大学教授 江藤茂博
●研究のために
・筒井康隆研究について
/筒井康隆研究者 平石滋
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【連載】
・『注解 色道大鏡』巻第二・寛文格
/立教大学名誉教授、立教新座中学校・高等学校校長 渡辺憲司