【特集:〈原文〉と〈語り〉をめぐって?――ポスト・ポストモダンの課題】
二〇〇八年七月号「〈原文〉と〈語り〉をめぐって――文学作品を読む」の続編です。
客体の対象の文章そのもの=〈原文〉という第三項は読み手に到達不可能、了解不能の《他者》であり、読み手は読み手自身が捉えた〈わたしのなかの他者〉に閉じられて、外部に出ることは出来ません。近代小説は全てが読み手に現れた〈語り―語られた対象〉であり、その自意識の枠を持たされています。その枠=境界領域のさらに〈向こう〉を覗き、〈こちら〉に還ってくると、世界は変わります。
●「ポスト・ポストモダンの課題」に関する問題提起
・〈原文〉と〈語り〉再考――村上春樹『神の子どもたちはみな踊る』の深層批評
/都留文科大学教授 田中 実
・ダイジェスト版「一〇〇%の愛」の裏切り――村上春樹『レキシントンの幽霊』の深層批評
/都留文科大学教授 田中 実
・「交流のナラトロジー」を超えて――「あたりまえ」との対話
/山梨大学教授 須貝千里
・作家の亡霊――二十一世紀の批評
/文芸評論家 田中和生
・文学のいのちと自由――〈読むこと〉の倫理
/文芸評論家 小林孝吉
●〈原文〉と〈視点〉をめぐって
・源氏物語の語りと視点
/専修大学教授 鈴木 泰
・文学作品の教育と言語学――奥田靖雄、国分一太郎、そして佐多稲子
/大東文化大学名誉教授 鈴木康之
●〈読まれ方〉に対する読み方をめぐって
・『平家物語』の語りを「読む」ということ
/名古屋大学名誉教授 山下宏明
・枠と語り手――『バラントレーの若殿』と『行人』
/広島市立大学教授 佐藤深雪
・「舞姫」――一人称の語りと〈機能としての語り〉
/新潟県立長岡大手高校教諭 丸山義昭
・志賀直哉「赤西蠣太」――語りの志向
/東北学院大学教授 渥美孝子
・南吉童話と「第三項」――〈語り手〉の語り得なかったもの
/愛知教育大学名誉教授 横山信幸
・物語と語り手の相克――〈金色の獅子〉はなぜ語られたか(宮沢賢治「猫の事務所」)
/都留文科大学非常勤講師 中村龍一
・川端康成『住吉』連作の〈原文〉と〈語り〉
/名古屋市立大学准教授 谷口幸代
・孤絶の涯ての〈夢〉――三島由紀夫『美神』
/法政大学第二高等学校教諭 喜谷暢史
●新刊紹介
・島村幸一著『『おもろさうし』と琉球文学』
/武蔵大学教授 古橋信孝
・藤井貞和著『日本語と時間――〈時の文法〉をたどる』
/黒田 徹
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【連載】
・『注解 色道大鏡』巻第二・寛文格
/立教大学名誉教授、立教新座中学校・高等学校校長 渡辺憲司