

【内容】
舎利とはサンスクリット語で“身体”を表す「シャリーラ」の音訳で、一般的には仏教の開祖「釈迦」の遺骨を指します。
宝珠は、サンスクリット語で「チンターマニ〈チンターとは“思考”、マニは“珠”を指す言葉〉」といい、仏の教えの象徴とされ、「あらゆる願いを叶える宝」とされるものです。
日本では、舎利と宝珠は結び付けられた形で広く信仰されていきますが、この、宝珠をかたどった舎利容器を礼拝対象とする「舎利信仰」は、釈迦そのものを崇拝する、仏教信仰の原初的なスタイルを源流に持つものであるといえます。
本書では、この舎利と宝珠の習合という視点から舎利荘厳美術の歴史と、華やかな装飾を持つ仏教工芸品の数々を取上げます。
【掲載図版「奈良・西大寺 金剛透彫舎利容器」や「宝珠曼荼羅図」など、約120点を収録】
第539号 「舎利と宝珠」
内藤栄(奈良国立博物館)/執筆
独立行政法人国立文化財機構/監修、至文堂/編集
ISBN:978-4-324-08748-0
主要目次
口絵(カラー16ページ)
一、舎利信仰の成立と宝珠との出会い
二、空海の舎利信仰と能作性宝珠
(1、飛鳥〜奈良時代の舎利信仰/2、空海の舎利信仰と後七日御修法/3、仏舎利八十粒と室生山龍珠との習合/4、能作性宝珠)
三、能作性宝珠とその容器
四、真言宗小野流の舎利法と宝珠法
五、重源の三角五輪塔
六、叡尊の舎利法と宝珠法の美術
(1、如意輪宝珠法/2、密観宝珠形舎利容器/3、小野三流の金輪仏頂法と西大寺鉄宝塔/4、金輪仏頂法に用いられた舎利容器)
七、様々な宝珠法の美術
(1、如法愛染法/2、如法尊勝法/3、空海に対する宝珠法/4、牛玉像)
【コラム:後七日御修法の源流をたどる】
特別寄稿 宝珠の象る王権 ―文観弘真の三尊合行法聖教とその図像―(阿部泰郎)