

19世紀中頃まで、現在の沖縄近辺は「琉球」という一つの国家で、東アジアにおける大交易地でありました。
日本と中国の間の王国でしたが、その文化は、それらを単純に足して2で割ったものではありません。
琉球独自に製作された金工品は、ほとんどが沖縄戦で失われてしまいましたが、本書に掲載している遺宝は、著者が何年にもわたり各地の旧家を訪ねて収集した、まさに琉球の文化を読み解く重要な資料です。
本書では、琉球史の時代軸に沿いながら、刀剣や装身具等の琉球金工の多様性と独自性を紹介します。
京都国立博物館企画室長 久保智康/著
ISBN:978-4-324-08742-8
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●序章
琉球金工への視点/琉球の時代区分と中国との関係
●1 銅鏡
古琉球時代の銅鏡/古琉球の「破鏡」/多彩な舶載鏡/近世琉球時代の道鏡/首里で製作された鏡
●2 甲冑
日本甲冑をまとう/琉球兜の個性
●3 刀剣
尚家伝来の刀剣/古琉球の刀剣需用と中国への移出/円覚寺のクリス/故宮に残る刀剣
●4 飾金具
浦添ようどれ出土金具の衝撃/勝連城跡出土の飾金具/浦添原遺跡の飾金具/中城御殿跡と首里城跡御内原跡出土の飾金具/円覚寺跡出土飾金具の製作地/ケーの飾金具/琉球の飾金具の特色
●5 仏具
尚泰久・尚真の仏教信仰と梵鐘/雲版と鰐口・けいす/鉦鼓とカネ/密教法具
●6 供養具
首里城跡京の内跡出土の香炉片/明代の香炉/日光東照宮と輪王寺の供養具/上江洲家の花瓶と燭台/檀王法林寺の香炉/近世琉球の供養具
●7 装身具
琉球簪と指輪/神女の金簪/神女簪の系譜/神女簪の製作年代
●8 酒器
御玉貫/盃と酒台/錫製酒器の文化/長柄銚子
●9 東道盆
故宮に残る東道盆と銀皿
●終章
琉球における金工製作/首里王府の金工工房/琉球金工の多様性と独自性
●特別寄稿
古琉球の金工品生産と流通
/早稲田大学琉球・沖縄研究所客員研究員 上里隆史
●主要参考文献
●図版目録