

【特集:近世散文における引用と挿絵】
物語における引き歌、和歌における本歌取りを想起するまでもなく、一篇の作品が先行する作品をふまえた表現を織り込むことは、古典文学の本質にも関わる特徴です。
絵巻物や物語図屏風などを例に取るまでもなく、作品と絵画とが緊密に結びつくというのも形象性ゆたかな文学作品の特徴です。
本特集は、近世初期から幕末維新期までに記された散文の中において、古典引用がどのようになされているか、また絵画とはいかなる距離感を保ちつつ作品が書き綴られているかを考究する専門家の論文を集成したものです。
●林羅山の題画文学と美術史――「武州州学十二景図巻」跋を読む
/城西国際大学准教授 門脇むつみ
●浅井了意の仮名草子における古典の引用
/龍谷大学准教授 和田恭幸
●『西鶴諸国ばなし』の絵――反復と独立
/神奈川大学教授 広嶋進
●八文字屋本の挿絵――西川祐信を中心に
/清泉女子大学教授 佐伯孝弘
●秋成における古今集仮名序の引用――『ぬば玉の巻』から『春雨物語』「海賊」まで
/大阪大学教授 飯倉洋一
●本居宣長の志向する和歌――歌論と和歌注釈の相関
/神戸大学准教授 田中康二
●京伝洒落本瞥見――詩歌俳などからみえてくるもの
/相愛大学教授 山本和明
●京伝合巻における音曲の引用――書体の工夫と挿絵
/日本大学准教授 佐藤至子
●京伝読本『忠臣水滸伝』、その『水滸伝』引用と翻訳ぶり
/就実大学教授 井上啓治
●読本に於ける挿絵の位相
/千葉大学教授 高木元
●十返舎一九の挿絵について――『附会案文』『十廻松』『夷曲東日記』
/明治大学非常勤講師 二又淳
●長谷川雪旦再考
/世田谷区立郷土資料館学芸員 武田庸二郎
●『南総里見八犬伝』第九輯結局下編表紙の図像について
/大東文化大学教授 播本眞一
●陸謙の水滸伝図像をめぐって――馬琴・崋山・国芳
/明治大学専任講師 神田正行
●春水人情本の和歌引用とその周辺
/防衛大学校准教授 井上泰至
●頼山陽の古典引用に見る才気
/早稲田大学教授 池澤一郎
●田能村竹田の題画文学における一考察――題跋の特徴とその機能
/出光美術館学芸員 宗像晋作
●明治木版草双紙の挿絵について
/徳島文理大学教授 佐々木亨
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●連載
・『注解 色道大鏡』巻第二・寛文格(1)
/立教大学名誉教授 渡辺憲司
・西鶴、平山藤五の言語宇宙(20)――譬喩・諺の世界をさぐる(追補3)
/早稲田大学名誉教授 杉本つとむ
●本・人・出版社
・小山内薫・市川左団次共編『自由劇場』(自由劇場事務所刊、郁文堂発売)
/早稲田大学名誉教授 紅野敏郎