議会局「軍師」論のススメ

清水 克士

議会局「軍師」論のススメ 第39回 局職員に求められる「余計なお世話」とは何か?

NEW自治体法務

2020.12.17

議会局「軍師」論のススメ
第39回 局職員に求められる「余計なお世話」とは何か? 清水 克士
月刊「ガバナンス」2019年6月号

 前号では、議員のためではなく、市民のために仕事をするという意識が、局職員には必要だと述べた。そのためには、議員のお世話係との意識からの脱却が求められる。

 だが、議員は市民の代表であるのだから盲目的に従うことが、結果として市民のために仕事をすることに他ならないとの考えもあるようだ。果たしてそうだろうか。

■市民感覚とのズレ

 私が執行部に在籍していた時代の古い話で恐縮だが、あるイベントに参加した時のことである。

 プログラムの冒頭で挨拶することになっていた議員が時間どおりに会場に来ないため、イベントスタッフが気を揉んでいた。スタッフは遅刻議員の支援者でもあるようだったが、「遅れて来るのが大物の証だと勘違いしているんだ。だいたい時間一つ守れない人間に公約なんか守れるかよ。遅れるぐらいなら、来なければいいのに」と、怒り心頭だった。議員が到着した時点で、臨機応変に挨拶の時間を挟むイレギュラー対応を求められることが、イベントスタッフにとっては大きな負担となるからだ。

 だが、いざ議員が会場に現れると、先の本音とは裏腹に「よくぞお出でくださいました」と、議員に笑顔ですり寄っていく姿に、こうして議員は「裸の王様」になっていくのだなと感じた記憶が残っている。

■「裸の王様」に伝えるのは誰か

 当時、私は議会局職員ではなかったので傍観していたが、今の立場なら議員への直言を迫られるだろう。なぜなら、故意に遅参する勘違いは論外だが、多忙による遅刻だとしても、市民には無関係な事情であり、議員だから多少は許されるとの驕り故の行動としか受け取られないからだ。時間を守ることは、社会人として最低限のマナーだけに、その人に対する信頼度を大きく左右する。だが、議員に近い支援者でさえ、本音で忠告することがなければ、市民の厳しい視線に当該議員が気づくことはないだろう。

 問題の本質は、遅参によるイベント進行に対する影響そのものではなく、議員は約束を守らないとの印象を市民に与え、議員自身はもちろん、ひいては議会全体の信頼を損なうことだ。

 もちろん、議長や議員派遣手続きを経た議員以外の議員の各種行事への参加は公務外の活動であるため、局職員が業務として対応する必要性は法的にはない。だが、議員が市民からの信頼を損ねている場面に遭遇して、見て見ぬふりをして良いのだろうか。

■職員は「市民と議会の懸け橋」に

 局職員は議員のためではなく、市民のために仕事をすることが、地方公務員法で義務付けられている。信頼を損なう議員の行動に対して直言することは、いわば局職員が「市民と議会の懸け橋」になることを意味する。議会・議員に対する市民の信頼感が高くはない現状は、局職員にとっても他人事ではあり得ず、信頼度を向上させることは「議会局のシゴト」の範疇であろう。

 雑務的な議員の身の回りのお世話が局職員の仕事だとする誤解が未だにあるようだが、本来すべきは、議員が気づかない市民からの耳の痛い話をあえて伝える「余計なお世話」である。

 儀礼的にではなく、本質的な部分で議員に本気で接してこそ、議員も局職員を「チーム議会」の一員と、認めるのではないだろうか。

*文中、意見にわたる部分は私見である。

 

Profile
大津市議会局長・早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員
清水 克士
しみず・かつし 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

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しみず・かつし 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

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