議会局「軍師」論のススメ

清水 克士

議会局「軍師」論のススメ 第33回 優先して市民に伝えるべきものは何か?

NEW自治体法務

2020.11.06

議会局「軍師」論のススメ
第33回 優先して市民に伝えるべきものは何か? 清水 克士
月刊「ガバナンス」2018年12月号

■約3割が賛否態度非公開

 地方議会に関するある調査結果を見て驚いたことがある。約3割の議会が議案等に対する議員個人の賛否(以下、「賛否態度」)を公開していなかったからだ。

 議員は議決機関の構成員として、自治体の意思決定に携わることが最も重要な任務である。地方議員は、政党や会派ではなく議員個人への得票によって、民主的正統性が担保されている。その意味からは、賛否態度こそが、有権者の投票行動の判断材料として、最優先で提供されるべき情報のはずだ。

 最高裁判事の国民審査における公報では、関与した主要な裁判における判断が明示されているのも、それが裁判官の資質を判断するにあたっての重要な情報だからであろう。同様の観点に立てば、賛否態度を市民に伝えようとしないこと自体、批判を免れないのではないだろうか。

■賛否態度非公開の理由

 賛否態度の公開を避けるのは、議員個人への批判を避けたいからであろうが、権利と義務は一対のものである。議決機関の構成員としての権利行使の結果を、市民に知らせないのは義務を果たしているとは言えないであろう。

 だが、時として賛否態度の非公開が、採決方法の問題にすり替えられることがある。賛否が分かれる際の採決方法としては、起立採決が一般的であるが、それは議案に対する可否の多数を諮るだけで、賛否態度は公式記録としては残らないからだ。確かに従来からの方法で、公式記録として残るのは記名投票であるが、全ての採決をそれで行うには余りに非効率であり現実的ではない。

 一方、起立採決にもかかわらず、議会広報紙では賛否態度を掲載している例がある。その根拠は局職員による事前確認だけという議会も多いが、本会議では突然異なる賛否態度をとる議員もおり、物的証拠を担保しておかなければ、賛否態度の正統性は保証できない。

■議会ICT化の要諦とは

 対応策としては、議会のICT化があり、その導入の本質的意義は「議会の見える化」である。具体的には、賛否態度を即時に表示できる電子採決システムの導入である。

 大津市議会では議会日程の全てを夜間休日だけで消化することは不可能である。そのため、平日昼間に行わざるを得ない会議への傍聴者増を企図するよりも、インターネット中継と録画配信を分かりやすいものとすることが、議会での議論を伝える最も現実的かつ効果的な方法と考えている。そこで、傍聴者だけでなく、中継録画視聴者にも賛否態度を正確にわかりやすく伝えることを重視している。

 起立採決する議場全景を画面上で見せられても、視聴者にとっては賛否態度までは判別不能である。電子採決システムは、電子記録による賛否態度の公式記録化はもちろん、中継録画でも賛否態度を画面上に明示することが可能となり、「議会の見える化」に大きく貢献する。

■議会改革と優先順位

 議会改革をフルセットメニューで一気に推し進めることは難しい。したがって、優先順位をつけて取り組むことが必然となるが、それは議事機関としての本質への近さや、市民にとってのメリットの大きさ、といった基準で判断されるべきである。その観点からは、議会における賛否態度の公開こそが、最優先で取り組むべき課題ではないだろうか。

*文中、意見にわたる部分は私見である。

 

Profile
大津市議会局長・早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員
清水 克士
しみず・かつし 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

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しみず・かつし 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

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