平成  年(モ)第  号(基本事件 平成  年(ワ) 第  号 ○○請求事件)             決     定   〇〇県〇〇市……           申 立 人(原 告)    ○   〇   〇   〇           同訴訟代理人弁護士    ○   〇   〇   〇 〇〇県〇〇市……           相   手   方    ○   〇   〇   〇 〇〇県〇〇市……           被       告    ○   〇   〇   〇           同訴訟代理人弁護士    ○   〇   〇   〇             主     文 本件申立てを却下する。             理     由 1 申立ての趣旨及び理由並びに相手方の意見   申立ての趣旨及び理由は,別紙「文書提出命令の申立て」記載のとおりであり,これに対する相手方の意見は,別紙「審尋事項回答要旨」記載のとおりである。 2 当裁判所の判断 (1)  民訴法220条4号ハにおいて引用される同法197条1項3号にいう「職業の秘密」とは,その事項が公開されると,当該職業に深刻な影響を与え以後その遂行が困難になるものをいうと解するのが相当である(最高裁平成11年(許)第20号同12年3月10日第一小法廷決定・民集54巻3号1073頁参照)。そして,文書提出命令の対象文書に職業の秘密に当たる情報が記載されていても,所持者が民訴法220条4号ハ,同法197条1項3号に基づき提出を拒絶することができるのは,対象文書に記載された職業の秘密が保護に値する秘密に当たる場合に限られ,当該情報が保護に値する情報であるかどうかは,その情報の内容,性質,その情報が開示されることにより所持者に与える不利益の内容,程度等と,当該民事事件の内容,性質,当該民事事件の証拠として当該文書を必要とする程度等の諸般の諸事情を比較衡量して決すべきものであると解される(最高裁平成18年(許)第19号同年10月3日第三小法廷決定・民集60巻8号2647頁参照)。 (2) 本件記録によると,別紙文書目録記載の文書(以下「本件文書」という。)に記載された情報は,相手方が賃貸人等の第三者から収集した不動産賃貸事例における新規賃料及び継続賃料に関わる情報であることが認められるところ,これらの情報は,一般的には,第三者に知られることを望まない事柄と解される。相手方は,不動産鑑定士として賃貸人等との信頼関係に基づき,賃貸事例を収集する趣旨の理解を得た上で,みだりに外部に公表されることはないとの前提で賃貸人等から情報提供を受けており,本件文書の記載に含まれる各賃貸事例に関する情報も,そういった相手方の不動産鑑定士としての業務を通じて収集された情報の一部であると推認される。そうすると,そのような情報が開示されると相手方と当該第三者との信頼関係が損なわれ,その後の情報提供に支障を生じ,相手方の業務に深刻な影響が生じる可能性があるということができる。 (3) したがって,本件文書の記載に含まれる各賃貸事例に関する情報は,保護に値する職業上の秘密に当たるものであるから,同文書の提出を命ずることはできないというべきである。 3 よって,本件申立ては理由がないから却下することとし,主文のとおり決定する。    平成  年  月  日      ○○地方裁判所第○民事部         裁判長裁判官     〇   〇   〇   〇 印            裁判官     〇   〇   〇   〇 印            裁判官     〇   〇   〇   〇 印