平成  年(モ)第  号              決     定   〇〇県〇〇市……           原       告    ○   〇   〇   〇           同訴訟代理人弁護士    ○   〇   〇   〇 〇〇県〇〇市……           被       告    ○   〇   〇   〇           同訴訟代理人弁護士    ○   〇   〇   〇  上記当事者間の当庁平成  年(ワ)第  号〇〇請求事件について,当裁判所は次のとおり決定する。             主     文 本件移送申立てを却下する。             理     由 第1 申立ての趣旨及び理由等 1 申立ての趣旨    基本事件を〇〇地方裁判所へ移送する。 2 申立ての理由 (1) 基本事件では,被告開設,運営,管理する〇〇病院(以下「被告病院」という。)の医師らが原告に対して〇〇手術(以下「本件手術」という。)をした際に,上記医師らに過失があったか否かが最大の争点であり,被告はこれを争うため,本件手術を担当した医師らの証人尋問を予定している。これらの証人尋問は,証言内容の専門性から,1人の証人について1期日以上の尋問が必要と見込まれるところ,これらの証人は〇〇県内に在住している。また,本件では,原告の本人尋問が行われると予測されるが,原告も〇〇県に在住している。     以上によると,基本事件は〇〇地方裁判所で審理することが便宜であり,当裁判所で審理をすると訴訟に著しい遅滞を招くおそれがある。 (2) よって,民訴法17条により,基本事件を〇〇地方裁判所に移送することを申し立てる。 第2 当裁判所の判断 1 基本事件は,被告病院で本件手術を受けた原告に重篤な後遺症が残存したのは,手術担当医師らに過失があったことが原因であるとして,原告が被告に対して損害賠償を請求している医療過誤訴訟であり,本申立ては,被告が,民訴法17条に基づき,基本事件を〇〇地方裁判所に移送することを求めるものである。 2 原告は,本件手術を担当した医師らの証人尋問を予定しているところ,同医師らが〇〇県に在住しているから,〇〇地方裁判所で審理することは訴訟の著しい遅延につながる旨主張する。なるほど,〇〇県在住の証人であるから〇〇地方裁判所で審理することが便宜であるという面は否定できないが,的確に争点整理を実施することで尋問時間は短縮しうるのであって,基本事件を〇〇地方裁判所で審理するとしても,必ずしも訴訟が著しく遅滞するとはいえない。    また,原告は,原告本人尋問を実施することの関係でも〇〇地方裁判所で審理することは訴訟の著しい遅延につながる旨主張するが,原告本人尋問が必要になるとは必ずしも認められず,仮に,これが必要となるとしても,それだけで訴訟が著しく遅滞するとは一概にはいえない。    さらに,本件訴訟は医療過誤を理由とする損害賠償請求であり,原告は,被告病院を開設し,運営,審理している被告の責任を追及しているのであるが,本件訴訟の性質に鑑みると,原告が本件訴訟追行のために支出する金銭はできる限り増大しないよう配慮することが相当であるところ,本件を〇〇地方裁判所で審理するとすれば,すでに〇〇県に事務所を有する弁護士を訴訟代理人として選任し訴訟活動を開始している原告にとって,費用の点でより負担となることは避けられず,〇〇地方裁判所へ移送することは,本件訴訟の性質から望ましくないといわなければならない。加えて,本件訴訟の当事者をみると、原告は個人であるのに対し,被告は医療機関を開設し,運営,管理している法人であり,当事者の性質に鑑みても原告の訴訟追行にかかる費用が増大しないよう配慮するべきなのであって,この点からみても,〇〇地方裁判所へ移送することは望ましくない。結局,基本事件を〇〇地方裁判所へ移送するとすれば,当事者間の衡平を損なうものというべきである。 3 以上によると,本件は,民事訴訟法17条により,訴訟の著しい遅滞を避け,又は当事者間の衡平を図るため,当裁判所から〇〇地方裁判所に移送するのが相当であるとはいえず,本件移送申立てには理由がない。よって主文のとおり決定する。    平成  年  月  日      ○○地方裁判所第○民事部         裁判長裁判官     〇   〇   〇   〇 印            裁判官     〇   〇   〇   〇 印            裁判官     〇   〇   〇   〇 印